あたしは人殺しじゃない、死刑は嫌!! でもコモのべろちゅうは、もっと駄目……
おどおど妄想系転校生・水里あかねの正体は、日本帝国にただひとり、帝陛下のかるた名人であった。亡き母と亡き親友、そして新たな親友たちのため、名人位を賭したタイトル戦に臨むあかね。だがその真剣勝負の舞台もまた、謎の鬼女・少子と謎の怨霊による「水の謀略」に充ち満ちた、残酷で破廉恥な罠であった……3人殺しの汚名を着せられ緊急逮捕されたあかねを救うべく、陰陽少女・小諸るいかと四国のコロンボ・外田警部が、「土の論理」で立ちむかう。執拗な伏線とロジックと読者への挑戦状とで好事家の快哉を博し、『ぐるりよざ』『終末少女』等、古野流ロジック本格作品群のプロトタイプともなった探偵小説シリーズ第2巻、『探偵小説のためのヴァリエイション 土剋水』を13年越しに文庫化。
著者のひとこと
日本帝国の世界線ですので、華族や軍人がナチュラルに存在する天帝シリーズ世界となりますが、それはデコラティブな要素に過ぎませんので、読書・物語の大勢に影響ありません。2008年の作品ゆえ(作家2年生)、我ながら稚拙に感じられる箇所が多々あり、本来ならワープロ稿を一から打ち直す「新訳化」が望ましいのですが……健康の問題から、最小限の朱入れにとどめざるを得ませんでした。結果として、13年前の空気感の再現と証拠化、という意義を持つものとなっています。すなわち、いまだ「街の書店さん」に「ノベルス」がたくさん並んでいた頃は、こういうタイプの勝手気儘な遊技も許されました(例えば今、ノベルス版に比し、タイトルや表1が大きく変わっているのは、まさにそうした「時代の文脈の変化」によるもので、それは著者を含め誰にも抗いがたいものです)。いにしえのノベルス時代の最後の残光が感じられる物語として、常連さんにも新しいお客様にも……稚拙さには目を瞑っていただいて……興味深く手に採っていただければ嬉しいです。
講談社文庫
- 発売日
- 2021.11.16