新任警視 上巻

警備警察vs.治安攪乱要因、世紀末の死闘

20世紀も終わりを迎えようとする時代の誰彼。弱冠25歳の警察キャリア官僚・司馬警部は、警視昇任とともに小規模県警察本部の公安課長を命ぜられた。東京で端末とFAXとコピー機しか部下のいなかった司馬は、一夜にして70名近い部下を指揮する所属長警視となったのである。ちなみに、司馬の公安課には司馬より年若い警察官など誰もいない……まして、司馬とその部下職員に付与された任務は誇張なく公安警察最大最難のもの……すなわち「事件化によるカルト教団の壊滅」であり、そのタイムリミットはY2K問題の帰趨が明らかとなる2000年1月1日の最初の1秒までであった。坊やは現場指揮官になれるのか。警察は治安攪乱要因のテロリズムを剔抉できるのか。関係者の誰にとっても、死闘の日々が始まった。

著者のひとこと

すっかり昔話になってしまいましたが、私のようなとっしょりの世代だと、25歳で道府県警察本部の課長職(まあ警察署長みたいなもの)に出たのです。諸々の制度改革があり、今は30歳弱になっていますが。しかしよくよく考えてみると、この5歳の差は大きい……25歳なんて小僧っ子ですもんね。老境に入った今、何事につけソツのない今の20歳代の若者を見ますと、当時の自分は度し難く愚かだったなあと思う一方、我武者羅さだけは負けていなかった気もします。当時の部下の皆が、それはもう苦労しただろうなと思いつつ。

新潮文庫

発売日
2023.4.1