老警

警察の大失態。警察官の大失態。それに重なり合う家族の破局。我が子が大量殺人犯となったとき、親には何ができるのか

日本のどこにでもある、平々凡々なA県とA県警察。今や日本のどこにでもある、引きこもりの子と老親の葛藤。だからこの日それらを襲った悲劇は、日本のどこでも起こり得る。そう、10年以上引きこもり生活を送っていた30歳代の者が、学区の小学校に侵入し、19人を死傷したこの「五日市小学校無差別通り魔事件」のごとき悲劇は。ただ……被疑者の父親が現職警部であるというのは、この日のA県警察にとって椿事にして悪夢であった。親子とは何か。家族とは。警察一家とは。非常の事件があらわにする、血のつながりと誤解そして再生の悲劇。

著者のひとこと

御家庭の事情によりますが、一般論として、親になるのは比較的容易ながら、親の務めを果たすのは実に困難です。ただこれを子の視点から見れば、子とて言いたいことは多々あるでしょう。子であることは親である以上に必然・運命ですから。いずれにせよ、他者でありながら他者でない、親と子の関係というのは危機の連続です。本書は、うち「子が殺人者になる」という最大級の危機を取り扱いました。

角川文庫

発売日
2022.8.25