取調べは何のために、誰のためにあるのか。事案の真相のため。被害者のため。自白獲得のため……そして叶うならば、被疑者のために。
真夜中の吉祥寺で発生した謎の火事。現場からは、片手錠で固く拘束された女子高校生の酷い遺体が。他にも犯罪少年3人が死線をさまよう中、唯一無傷で確保されたのは犯罪少年「T」17歳ただひとり。Tが完全黙秘を貫く間、警察は本件を「女子高校生集団監禁事件」と断定、Tらによる言語道断の所業に激怒するが……するとにわかにTは完全黙秘をやめ、警察と世論を挑発するかのごとく、恥ずべき鬼畜の所業を雄弁に自白し始める。取調べ官は、担当管理官は、そしてTと少女は何を思い何を願うか。最後の調書に記される、絶望と希望の「真実」とは。
著者のひとこと
著者自身の未熟を感じた一冊です。御多忙な先達にゲラをお読みいただいたのですが、まこと懇切な御指摘をたくさん受け、改めて「人間を描くことについての未熟さ」を痛感しました(本格ミステリ書きとしてはまるで無視している要素なので……)。結果としては、根本的な改稿が施され、私独りでは到達できなかった水準にまで引き上げていただけたと感謝しています。作品自体の特徴としては、「身元不明」「R.E.D.」の箱﨑ひかり警視が主役級ですが、無論それらの先行作品を前提としてはおらず、ノンシリーズとしても普通にお読みいただけます。
講談社
- 発売日
- 2021.5.18