古野まほろ
この世界の何処にも、私が座るべき椅子は無い。またその資格もありはしない。私に残された道は、ならば ・・・・・・
「いち、いちばん悲しい生き物は」「ん?」「十七歳の、おんなのこかも知れない」「悲しみよこんにちは、かい?」
「全員殺す。最後に私も死ぬ。あんなバケモノは容赦できない。もちろん自分がバケモノになることも容赦できない。バケモノを駆除するのが私の使命。たとえそれが仲間であろうと」
「まあ、僕は君がどこへ駆けてゆくのか、いや、駆けようとしているのかすら知らないし、君の人生に何らの影響力を有してもいないが、それでも・・・・・・ああ、梅はいい香りだ。桜は人を踊らせるが、梅は人を素直にする。そうじゃないか?」
この心赴くまま、悦楽から悦楽へ、淫靡な蜜を求めて。あたしの愉悦はただひとつ、悦楽の薔薇で自ら慰むこと。
「その論点を追及するかぎり、これまでもこれからも、あなたは嘘吐き族でいらっしゃる」「・・・・・・残念です、本当に。それでは彼女の御霊に代わって、誥げましょう。そう、私は嘘吐き族です。有難うございました。弁論を終わります」
「僕はいったね、初訓示でいった。我々に喧嘩を売ってきている治安攪乱要因にあっては、今日勝てなければ明日勝つ、明日勝てなければ明後日勝つ、明後日勝てなければ勝つ迄此処に居ると、その覚悟を持って仕事をしてほしいと。そのために、重き荷を負うて遠き道を行ってほしいと。自分で自分に鎖を課して、当課員としての重い義務に耐えてほしいと。そして結果はあきらかだ。我々は最大の戦争に勝った。これすべて各位の、性根と覚悟のたまものだ。課長として、指揮官として、こんなに嬉しいことはない。僕はこれから当県を離れる。よって、僕らの道はここで分かれるが――各位の献身と努力を僕は忘れない。僕がこれからどのような道を歩こうと、それを生涯のたからものとして生きてゆく。各位は僕のたからだ。そして当県警察の、いや日本警察のたからでもある・・・・・・どうか躯に気を付けて、警察道の遠き道を、これまでのように邁進してほしい。各位と当課のますますの活躍を祈念してやまない。僕からは以上だ」